阿波たくあんは徳島県の阿波地方のお漬物です。
徳島県は大正時代から昭和にかけてこの阿波たくあんが全国一の生産量を誇っていました。
阿波たくあん 由来・特徴
徳島県は温暖な気候と肥沃な大地に恵まれ、野菜が豊富にとれる土地で「漬物のふるさと」とも呼ばれています。
中でも「阿波たくあん」は吉野川下流域で栽培された「阿波晩生」という品種の大根を使って作られ、この「阿波晩生」がたくあんづくりに最適と評され、大正時代から昭和にかけて全国一の生産量を誇っていました。
■乳酸発酵させ、約8ヶ月間熟成させます
大根を1月~2月に塩で10日ほど漬け込んだ後、洗浄して塩を入れずに米ぬかに約八ヶ月間発酵させます。十分に発酵して酸味が出た段階でスダチ果汁や柿の皮、トウガラシなどの調味料を混ぜた米ぬかに漬けて完成させます。
引用:丸井産業(徳島県)/いなかたくあん・お漬物・阿波の逸品 (marui-sangyo.co.jp)
昔ながらの伝統的な製法で作られる「阿波たくあん」は酸味が強く、懐かしい味が評判です。
衰退していった「阿波たくあん」
「阿波たくあん」が「隠れ名物」と称されているのは、過去に日本一を誇っていたものの、廃れてしまったことがあるからです。「阿波晩生」は品種改良を繰り返し作られた大根で、たくあんにとても最適な品種だったのですが、他の青首大根と違い病に弱いという弱点がありました。
昭和20年代まで全国一の生産量を誇っていましたが、昭和25年に大根ウィルス病が発生し、「阿波晩生」は大きな被害が出ました。その後、病気に強い品種に改良したものの、他の産地に市場を奪われたことがきっかけとなり、かつての勢いは取り戻せず、阿波たくあんは衰退していってしまったのです。
現代の「阿波たくあん」
現在の「阿波たくあん」は徳島県にある一部のお漬物メーカーが細々とではありますが、地元の味を守り生産している状況です。
時代の経過とともに廃れてしまったお漬物は各地にたくさんあります。日本人のコメの消費量の減少に追随するようにお漬物は食べられなくなりました。また消費者が浅漬けを好むようになってきたのも、お漬物消費量の減少傾向の原因にもなっています。
ですがお漬物は日本の食文化にはなくてはならない存在で、日本が誇る保存食であり栄養食です。
「阿波たくあん」も地元の野菜を使い、丁寧に作られた未来に残ってほしい、美味しいお漬物のひとつです。
コメント